金属パーツの質感を生かしながら適度な膜厚を実現
ウレタン塗料を圧倒的に凌駕する密着性と塗膜強度が魅力
ガンコート、パウダーコーティングに続く
第3の焼付塗料「AREX KOTE」
カーベックはパウダーコーティングやガンコートや結晶塗料など、工業系で一般的な焼付塗料をショップやエンドユーザーに提供することで、補修ペイントやカスタムペイントの新たなジャンルを構築してきました。そこに新たに加わる「AREX KOTE(アレックスコート)」は、パウダーコーティングやガンコートでは表現できない風合いを実現する高機能アクリル焼付塗料です。ガンコートより膜厚が欲しい、パウダーコーティングより金属の質感を出したい、ウレタン塗料より強度が欲しいというニーズに完璧にお応えします。
開発ストーリー
ガンコート、パウダーコーティングでは満たしきれない
焼付塗装ユーザーのリクエストに直面
カーベックでは自社開発製品である温風循環焼付乾燥器のCVシリーズを中核に、ショップやプライベーターに向けてガンコートやパウダーコーティング、結晶塗料などの焼付塗料を販売しています。従来、焼付塗装は大規模大量生産向けの工業生産設備という位置づけでした。私たちは焼付塗装の特徴や強みはそのままにダウンサイジングすることで、エンドユーザーに向けた塗装に関する新たな分野を開拓したという自負があります。
私たちが提供する焼付塗装が認知される中で2本柱として成長したのが、放熱性があり耐薬品性や表面硬度が高く、エンジンやブレーキキャリパー、オイルクーラーやラジエーターの塗装に最適な機能性塗料であるガンコートと、サイズが大きく形状が複雑でねじれやしなりを生じるバイクのフレームやスプリング、自動車やバイクのホイール塗装で他を圧するパウダーコーティングです。
いずれも塗装の個性や使い分けが明確であり、焼付塗装を行いたいユーザーはガンコートかパウダーコーティングのどちらかで満足頂けると考えてきました。一部のユーザーからは、バイクのフレームにパウダーコーティングを使用した際の塗膜の風合いや厚みに関してご指摘を受けることもありましたが、性能面で絶対の自信があったのでフレームや足周りの塗装はパウダー一択というスタンスに迷いはありませんでした。
しかしある施工店から、サンドブラストで下地を整え見栄えの悪い溶接痕を修正してパウダーコーティングでピカピカに仕上げた旧車のフレームに対して、ユーザーから「古いバイクならではの風合いが全くない」と言われたという話を聞いた時にハッとしました。塗装のプロはできるだけ良い仕事をしようと作業するものですが、それが顧客の意向と合致しなければ納得いただけないのです。私たちはガンコートとパウダーコーティングを長きに渡り取り扱うことでそれぞれの特性を知り、強みを理解しています。しかしそれゆえに固定観念ができてしまい、ユーザーの意向とは別にガンコートかパウダーコーティングのどちらかに当てはめようとしていたのではないか、と気づかされたのです。
ガンコートの機能性の高さは折り紙付きですが、樹脂成分が少ないため膜厚を稼ぐのが苦手です。パウダーコーティングは溶剤がなく肉持ち感が良いのが特徴ですが、文字通り樹脂でコーティングされたような質感になります。旧車や絶版車のフレームの純正塗装に使われてきた塗料は溶剤系で、その塗膜はガンコートより厚くパウダーコーティングより薄い仕上がりです。
私たちの塗料はあくまで機能が優先で装飾性は二の次、というと語弊がありますが、ユーザーが求める「風合いを再現したい」いう意味が理解できていなかったのです。そして現実としてそのようなニーズがあるのなら、それに応えられる製品を私たちが得意とする焼付塗装で提供するべく開発を開始したのです。
工業界ではポピュラーなアクリル焼付塗装を
ショップやエンドユーザー向けに展開
「AREX KOTE」でガンコート、パウダー、
溶剤塗料の全包囲網が完成
ガンコートでもパウダーコーティングでもない塗装の風合い、塗膜の仕上がりで真っ先に思い浮かぶのはウレタン塗料を筆頭とした溶剤系の塗料です。調色やツヤ感の調整といったパウダーが苦手な項目も溶剤系ならやりやすく、「メタルフィルム」と呼ばれるほど塗膜が薄いガンコートより膜厚があります。
とはいえ塗料商ならどこでも取り扱うウレタン塗料を、これから新規で取り扱っても新鮮味はまったくありません。さらに私たちカーベックには「工業系で用いられる技術や製品を小規模少量生産のショップやエンドユーザーに提供する」というコンセプトがありますので、工業界で実績のある溶剤系の焼付塗装に的を絞りました。
工業界の溶剤系焼付塗装を代表するのが、「メラミン塗料」と「アクリル塗料」です。量産品の焼付塗装として普及しているのがメラミン塗料で、塗膜の肉持ち感が良くポッテリとした仕上がりになるのが特徴です。それより高級なのがアクリル塗料で、メラミン塗料より塗膜が薄く滑らかで美しく、耐候性と耐食性に優れています。
硬化時に焼き付けるというと、遠赤外線ヒーターで加熱するウレタン塗料も焼き付けではないかと思われるかも知れません。しかし高くても70℃程度の加熱に留まるウレタン塗料に対して、アクリル塗料は180℃での焼き付けが必要です。そのため樹脂パーツの塗装には使えませんが、アクリル塗料の金属素材に対する密着性の高さや塗膜自体の強度はウレタン塗料を圧倒的に上回ります。
パウダーコーティングやガンコートとは異なる風合いを求めて、フレームやスイングアームにウレタン塗料を用いるショップや施工店もありますが、実は納品後のトラブルを不安視しているという声が少なくありません。ウレタン塗料を使えばガンコートより厚くパウダーより薄い塗膜になりますが、ボルトを締め付けると塗装面にクラックが入ったりパーツ全体を曲げると塗膜が剥がれることがあります。塗膜が厚くなりすぎないよう、下地のサフェーサーを使わず金属素材に直接ウレタン塗料を塗る場合にも割れや剥がれが発生します。
その気持ちも分かりますが、ウレタン塗料はサフェーサーを使用して塗装するように設計された塗料なので、サンドブラスト後の金属素材にダイレクトに施工した塗膜が割れたり剥がれるのは仕方がありません。またサフェーサーを使用しても、硬化剤の作用で塗膜が固まる溶剤系塗料は焼付塗料ほどの強度にはなりません。やはりウレタン塗料は外部から大きな力が加わることのない外装パーツの塗装に適した塗料なのです。
これに対して焼き付け塗装用のアクリル塗料は、金属に直接塗装しても密着性が良好で耐候性、耐食性が高く柔軟性も持ち合わせるように設計されており、同じ焼き付け用のメラミン塗料より塗膜が薄いため溶接部分のビードを覆い隠さないなど、金属パーツならではの質感を損なわない塗装が可能です。ただし塗膜を硬化させるには180℃の加熱が必要なので、設備として焼付乾燥器が不可欠です。
パウダーコーティングやガンコートと異なる第三の矢としてアクリル焼付塗料の販売を決めたものの、アクリル塗料ならどれでも同じというわけではありません。今から十数年前にガンコートやパウダーコーティングの取り扱いを始める時も、いくつものメーカーからサンプルを取り寄せて独自のテストを行いました。塗料メーカーの言い分を信じないわけではありませんが、私たちは商社ではなく購入したユーザーに製品の特徴を正確に伝えられるメーカーとして商品を取り扱うため、セールストークを鵜呑みにせず独自の評価基準に基づいてテストを行っています。
そして過酷で意地悪とも言えるほどの実験を繰り返した末に「これなら大丈夫!」と太鼓判を押したのが「AREX KOTE(アレックスコート)」です。このネーミングは私たちの造語でA=アクリル塗料界のREX=王を表現したものです。加えて金属の保護塗膜という意味でキャッチフレーズとして「メタルプロテクト」と名付けています。
アレックスコートは金属に直接塗装しても密着性が良く、塗装した薄板を180°近くまで折り曲げても塗膜が割れることも剥がれることもありません。その上紫外線に強く擦っても傷が付きづらいのも特徴です。パウダーコーティングは調色やツヤ感の調整が難しいのに対して、アレックスコートはウレタン塗料などの溶剤系塗料と同様の調色が可能で、フラッターを添加することでツヤも調整できます。
シンナーを使わず樹脂成分も少ないガンコートは塗装後にレベリングしないので平面や大きな物を塗装する際にはテクニックを要しますが、アレックスコートはスプレー後に乾燥器に入れるまでのセッティングタイムで塗膜がジワジワとレベリングしていくので、スイングアームやフレームも塗りやすいのが魅力です。その上で硬化後にはアクリル素材の樹脂感を下地の金属素材の肌感を残した仕上がりとなるので、パウダーコーティングともガンコートとも異なる質感が得られます。
カラーラインナップは黒と白と銀、色材の三原色である赤、青、黄、ツヤを調整するためのクリアとフラットベースがあり、赤、青、黄を混ぜ合わせて調色できるためオリジナルカラーも作れます。工業界ではポピュラーな焼付塗料を補修やカスタム業界で使用している例は皆無ですが、パウダーコーティングやガンコートで既に焼付乾燥器を使用しているユーザーにはきっと満足いただけるはずです。
このように説明すると「じゃあパウダーコーティングとガンコートとアレックスコートでどれを選べば良いの?」と思われるかも知れません。パウダーコーティングとガンコートの特性が明確な分、私たちの中でも実はそうした議論はありました。しかし「良く切れる刃物」を想像する時にカッターナイフとハサミと斧を思い浮かべる人がいるように、優れた塗料といっても一つに絞り込むことはできません。パウダーコーティングほど厚い塗膜ではなく、ガンコートより塗膜感があり、ウレタンより強い塗料を求める声が現実にある中にアレックスコートが加わることで、「焼付塗料の全包囲網」が完成したと考えています。私たち自身が長くパウダーとガンコートという二者択一で進んできましたが、塗装面の風合いにこだわるユーザーに向けた塗料として、アクリル焼付のアレックスコートは最適な選択となるはずです。