超音波洗浄機は狭い隙間に入り込んだ汚れや研磨剤の除去に絶大な効果を発揮!
開発ストーリー
超音波洗浄機の存在を身近に感じるのは、眼鏡屋さんの店頭で行っている洗浄サービスだと思います。
水が入ってジジジジ……と音の出ている金属製のトレイに眼鏡を入れると、汚れが浮き上がる機械です。使い方は簡単ですが、その原理が分かる人は少ないでしょうから、まずはじめに超音波洗浄とは何か? を簡単に説明しておきましょう。
超音波とは人の耳では聞き取れないほど高い周波数の音を指し、水の中で超音波を発生させると水中に微細な泡が発生します。超音波よる泡は短時間かつ連続的に発生と破裂を繰り返し(この現象をキャビテーションと呼びます)、破裂する際に大きなエネルギーが発生します。
この力によって物体表面の汚れを浮き上がらせるのです。超音波発生装置で作り出した超音波は、水の容器内の振動子から水中に伝えられます。そして超音波による共鳴作用によって、指やブラシが届かない場所にも使えるのも特長です。
汚れを取り除く方法を大別すると、ブラシなどで擦る物理的洗浄と、ケミカルや溶剤などの反応を用いる化学的洗浄に分類でき、破裂する泡の力で汚れを叩く超音波洗浄は物理的洗浄の一つとなります。
工業界においては、超音波洗浄機は製造メーカーを中心に脱脂洗浄やクリーニング目的でごく一般的に使われています。塗装前のパーツにとって油分は大敵で、シンナーやアセトンで入念に油分を拭き取りますが、厳密にいえば脱脂洗浄剤を塗布したウエスがパーツ表面を完璧に拭えているか否かは明確には分かりません。
修理やレストアなど一品物の塗装なら手作業でも間に合うかもしれませんが、大量生産の現場でこれをやっていては品質の安定性が保てません。しかし超音波洗浄機なら、洗浄したいパーツが容器内の水に触れていれば、無限に繰り返す泡の破裂によってパーツ表面の汚れを除去できるのです。
その脱脂洗浄力は、純水と洗浄液を組み合わせた溶液に手を浸すとあっというまにカサカサになってしまうほど強力です。柔らかく繊細なフィンが並ぶ熱交換器の洗浄には大変気を遣うものですが、超音波洗浄機を使えばフィンを曲げる心配は不要で、ブラシが届かない奥深くまで確実に洗浄できるため、次工程の表面処理を歩留まりを上げることが可能です。
ただし、超音波で汚れを掻き落とすといっても、硬い金属ブラシでゴシゴシ擦るような力はないので、こびりついたガスケットやグリスのような分厚い汚れを落とすのは苦手です。あらかじめ大きな汚れを取り除いた後で、最終的な前処理段階で用いるのが超音波洗浄機なのです。
2000年代半ばにメーカーの生産工場で工業用超音波洗浄機を見て、これをダウンサイジングすればプライベーターやショップの仕事の品質向上に役立つと確信しました。
世の中に超音波洗浄機を開発製造しているメーカーはありますが、その大半は生産工場向けの製品ばかりで、機器のサイズや製品価格はバイクショップやペイントショップ向けとはいえないものばかり。
そこで自社で製品開発に取りかかりましたが、超音波とは何か? 洗浄の原理は? など、ゼロからスタートした我々にとって道のりは試行錯誤の連続でした。
超音波発生装置や水中に超音波を伝える振動子といった個々の要素をそれぞれ入手することはできますが、最終製品として完成させるためには水を入れる容器を含む本体部分を新たに設計、製造しなくてはなりません。
その過程で、超音波洗浄機の性能を大きく左右する重要なポイントが「タブ」と呼ばれる容器の素材や仕様にあることを知りました。
超音波発生装置をエンジンに、タブをフレームや足周りにたとえてクルマに当てはめると、いくら強力なエンジンを用意してもフレームが脆弱では、その馬力を路面に伝えることができず速く走ることはできません。
反対にエンジンに頼りすぎなくても、発生した馬力をを受け止めて駆動力をしっかり伝えられるフレームと足周りがあれば、結果的に速いマシンになる=効率の良い超音波洗浄機になることが分かったのです。
カーベック初の超音波洗浄機ULT-1600では、このクラスの洗浄機では破格ともいえる1600Wの高出力超音波発生装置を搭載しました。大馬力エンジンほど洗浄力が向上すると思ったからです。
しかしULT-1600の製品化以降も超音波洗浄について学びながら開発を続けたことで、新製品のソニックスターはタブの剛性をアップするとともに、超音波発生装置の出力を1000Wとしながら従来以上の性能を発揮することに成功しました。
タブの性能追求と並んで、タブの中の水にもこだわっています。超音波洗浄機にとって水は不可欠ですが、この水には目に見えない溶存気体と呼ばれる成分が含まれています。
一般的な水道水をタブに注水すると、はじめは溶存気体が全域に散らばっていますが、時間の経過とともに水の自重によってタブの下部の溶存量は減少します。そして超音波にとって邪魔な気体が少なくなることで、洗浄効率が向上するのです。
私たちはULT-1600の深さ700mmのタブの中で、深度によって超音波の利き具合に差が出る原因を追及している中でこの事実に気づき、洗浄に用いる水の改質の重要性に着眼しました。
洗浄能力を安定させるため、タブに注水した水はすぐに使わず、界面活性剤を用いて溶存気体の濃度を均等にする専門メーカーもあるようですが、私たちは溶存気体そのものを無くすことに注目しました。
そしてタブに注水する水分から強制的に溶存気体を除去するために開発したのが、マイクロバブル発生装置です。水がこの装置内を通過すると、雑巾を絞るかのように溶存気体が泡となって排出されます。
この新製品ではタブの水をオーバーフローさせて循環していますが、その経路に設置したマイクロバブル発生装置を通過するうちに、発生する気泡がどんどん少なくなり、溶存気体が無視できる状態まで減少すると気泡が発生しなくなります。
この状態で超音波発生装置を稼働させれば、超音波を減衰させる要因がない分洗浄物にダイレクトに作用して、洗浄効率の大幅アップが実感できました。
タブの水をオーバーフローさせるという仕組みも、ソニックスターならではの独自のメカニズムです。一般的な超音波洗浄機のタブは水面が常に同一レベルにあります。パーツから剥がれた比重の軽い汚れは水面に浮きますが、タブからパーツを引き上げる際に汚れが浮いた水面を通過することになり、せっかく洗浄したパーツが再び汚れる可能性があります。
それを避けるために界面活性剤入りの洗浄液を用いるのですが、それでも根本的な改善の余地があると考えました。そこで採用したのがタブの水を常にあふれさせるオーバーフロー式です。
水より比重の軽い汚れは溢れる水とともタブの外に運ばれるため、タブから引き上げるパーツに汚れが付着することはありません。もちろん、オーバーフローした水は内部に回収するので本体外部にこぼれませんし、回収した水はマイクロバブル発生装置を通して循環させるので、タブの水面も下がらず溶存気体の少ない水を使い続けることが可能です。
またオーバーフローさせた水に浮かんだ汚れを回収する装置も備えており、汚れた水がタブに戻ることはありません。オーバーフロー式洗浄機はメーカーが採用する工業用としてはポピュラーですが、ショップが導入するサイズや規模の機械では前例がなく、画期的といえるシステムなのです。
タブの剛性もマイクロバブル発生装置も、超音波洗浄機の専門家ではなかったおかげで「なぜなんだろう?」「どうすれば解決できるのだろう?」と先入観なく純粋に問題解決に取り組むことができたと思っています。
特にマイクロバブル発生装置によって水を改質しようという発想は既存のメーカーにもない独自の着眼点による物であり、コンパクトながら圧倒的な洗浄効果の高さを実現する大きな要因となっています。
このような紆余曲折を経て開発したソニックスターの最大の特長は、ブラシが届かず水圧も及ばないような、狭い隙間の奥に入り込んだ汚れも掻き出すように除去できることです。
エンジン部品の下地処理のためにサンドブラストやウェットブラストを使うと、どれだけ念入りにマスキング作業を行っても細かなメディアが内部に侵入してしまいます。
バルブとバルブステム、シリンダーとピストン、あるいは軸受け部分など、クリアランスが狭くエンジンオイルで潤滑が保たれているような場所に硬いメディアが紛れ込めば、エンジン内部に傷を付けてしまいます。
それを防止するためブラスト使用後には水洗いを充分に行い、あるいはその後に加熱乾燥して、乾いたメディアをエアブローで吹き飛ばすなどの後処理を行います。
しかし水で濡らした状態でも加熱乾燥させた状態でも、一度付着したメディアは簡単に取り除くことはできないのが事実です。貫通穴ならまだしも、止まり穴に入ってしまったメディアはさらに難易度が上がります。
同じ場所にじっとしていてくれるならまだ救いはありますが、何かをきっかけにそれが剥がれてエンジンオイルに混入して各部に運ばれてしまったら最悪です。
超音波洗浄機があれば、パーツの表面はもちろん、指やブラシが届かない狭い隙間に入り込んだ汚れや研磨剤に対しても、超音波が作用してパーツ表面の付着物を浮き上がらせることができます。
そもそも、エンジンの内部パーツに対して固形メディアを使ったブラスト加工はおすすめしづらいというのが私たちの基本的な見解ですが、残ったメディアを確実に除去するために超音波洗浄機を用いるのは絶大な効果があると考えます。
私たちの製品ラインナップを活用するなら、オイルやグリス、カーボンなどの大きな汚れはスプラッシュショットで洗浄し、そこで残った微細な汚れを超音波洗浄機で完全に除去する二段構えで臨めば、完璧な下処理が可能になります。
こんな用途におすすめ
- 塗装前の脱脂洗浄
- サスペンションオーバーホール前の洗浄
- 成型用金型の洗浄
- 金型に付着した離型剤の除去
- サンドブラスト/ウェットブラストのメディア除去
特徴とメリット
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1 金属パーツの汚れ落としに最適な周波数と出力
超音波洗浄機は発生する周波数によって特性が異なり、キャビテーションのエネルギーは周波数が低いと大きく、高いと小さくなります。
強力な汚れ落とし効果を期待するなら周波数を下げれば良さそうですが、エネルギーが過大になると相手素材にダメージを与えるため注意が必要です。
一般的に28KHz、40KHz、80KHzの周波数が用いられており、28KHzは塗装剥離や足づけなど表面を荒らす作業、80KHzは半導体の洗浄、40KHzはオールマイティに使えます。
ソニックスターは汎用性の高い40KHzの周波数を採用し、狭い隙間まで強力なキャビテーションを到達させるため、出力は1000Wとしています。 -
2 超音波の減衰を抑制するステンレス製の高剛性タブ
発生した超音波がタブの壁面に当たって反射しながら洗浄を行う超音波洗浄機にとって、タブの強度は重要な要素です。
ソニックスターのタブは同クラスの洗浄機に比べてステンレス素材の厚みを増して本体剛性を大幅にアップ。
またシーリングによってフレームとタブを一体化することで、タブ自体の共振による超音波減衰を抑制します。
タブ外側のコントローラーは、専用ラックによって位置が変更できるため、作業場ごとに異なる設置場所に柔軟に対応します。
本体底のキャスターにより容易に移動でき、レベル調整が可能な足により水平に設置できます。 -
3 水中に溶け込んだ空気を追い出すマイクロバブル発生装置
私たちの目には見えませんが、水中に溶け込んだ空気は超音波の勢いを減衰させる大敵です。
ソニックスターにはタブ内の水の溶存空気を取り除く新開発のマイクロバブル発生装置を装備しており、効率的な洗浄が可能となります。
超音波発生装置、ステンレスタブの性能向上に加えて、水の品質にまでこだわる画期的なマイクロバブル発生装置によって超音波専用機の新たなシーンを提供します。 -
4 着脱が容易な投げ込み式振動子を採用
タブの底に設置される超音波を発生する薄型の振動子は取り外しが可能です。
使用時は頑丈なガードフレームで保護されており、重いホイールを投入しても振動子にダメージを与えることはありません。 -
5 20インチホイールも余裕で入る348ℓタブ
ホイールやラジエターの補修や再塗装といったニーズに応えるため、タブは幅800×奥行500×深さ870mm、容量348ℓとしました。このサイズによって、大径20インチの自動車用ホイールも完全に沈めることができます。
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6 油分や浮遊ゴミを取り除くオーバーフロー構造
内部に壁を設けることでタブを二層に区切り、メインタブから溢れた水を隣のタブで回収するオーバーフロー構造を採用。
水面に浮いた汚れは常にメインタブから流れていくため、洗浄が終わったパーツを引き上げる際に汚れが再付着することがありません。
またこのタブに流れ落ちた水は、油分回収用のシートに吸着するため水の汚損が少ないのも特長です。
工業系の連続処理機では一般的なものですが、ショップ設置用の超音波洗浄機ではきわめて珍しい装備です。 -
7 水の入れ替え、タブの洗浄が容易なドレンバルブ
別売の弱アルカリ性専用洗浄液とともに、脱脂洗浄やブラストメディアの除去に効果を発揮するソニックスター。
洗浄作業の中でも最終工程に用いることから、タブの内部の汚れは顕著ではありませんが、定期的な入れ替え作業は必要です。
本体底部のバルブを開けば内部の水を簡単に排出できるので、常にきれいな状態で使用できます。 -
8 専用カバーにより水分の蒸発や異物混入を防止
ステンレス製の専用カバーはタブ内への異物混入や水分の蒸発を防止します。
このカバーはコントローラーの取り付け位置に関わらず使用可能です。
製品情報
脱脂洗浄や研磨粉・ブラストメディア除去などの頑固な汚れに効果的なハイパワー超音波洗浄機。
複雑形状部品の洗浄品質の均一化と、洗浄時間の短縮化を実現。大型部品もらくらく投入できる余裕のサイズ。
脱気システムで特許取得 (特許第6976623号)
総務省指定型式認証取得済 (第CU-21002号)
外装寸法 | 幅 | 1100mm |
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奥行 | 600mm | |
高さ | 1030mm | |
有効槽内寸法 | 幅 | 800mm |
奥行 | 500mm | |
高さ | 780mm | |
振動子寸法 | 幅 | 400mm |
奥行 | 300mm | |
高さ | 70mm | |
コントローラー寸法 | 幅 | 330mm |
奥行 | 420mm | |
高さ | 220mm | |
槽容量 | 348L | |
本体重量 | 125kg | |
コントローラー重量 | 11kg | |
本体電源 | 単相200V 3A 1000W | |
発振出力 | 1000W | |
発振周波数 | 40kHz | |
発振方式 | 単一周波方式 | |
槽材質 | ステンレス(SUS304) | |
コントローラー筐体材質 | スチール(粉体塗装仕上げ) | |
安全装置 | 水位センサー ・空振動防止 |
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付属品 | ドレンホース2m 振動子保護ネット コントローラー設置台 ステンレス蓋 |
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本体価格 (税別・送料別) |
¥870,000 (税込・送料別:¥957,000) |
『 ソニックスター』は、金属製品の研磨粉・塵埃の洗浄に最適な周波数です。
キャビテーションのエネルギーは、低周波では大きく、高周波では小さくなります。
『ソニックスター』では、金属に与えるダメージが少ない40kHz を採用。金属製品の研磨粉・塵埃の洗浄に最適です。
※アルミや真鍮などの柔らかい金属を洗浄する場合は、必ずテストを行って下さい。
製品特徴
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40kHz-1000W の圧倒的パワー
キャビテーションの発生量を決める出力は、このクラス最強を誇る1000W(電圧調整機能付き)。
また、低周波数に比べワークを傷めにくい40kHz 帯を採用。母材を傷めず頑固な汚れも徹底的に除去。 -
大型専用ステンレス槽
超音波の最適な反射効率を得るために専用で設計された大型ステンレス槽。専用蓋が付属しますので、水分の蒸発防止のほか異物混入のリスクも軽減します。 -
専用洗浄液(別売)
別売の弱アルカリ性専用洗浄液を使用すれば、物理的作用だけでなく、化学的作用も組み合わせた洗浄が可能です。 -
メンテナンス性に優れた投込式振動子を採用
メインコントローラー、振動子、ステンレス槽はそれぞれが別体設計のため、部品交換や槽のサイズ変更なども対応可能です。 -
設置場所に合わせたレイアウトが可能
ステンレス槽にはキャスターを装備しており、移動やレイアウト変更も簡単。メインコントローラーマウントは、ステンレス槽の縁に吊り下げるタイプ。状況に応じて、4 方向のどこでも吊り下げ可能です。 -
特許取得
脱気システムで特許を取得いたしました。
【特許第6976623号】 -
型式指定
総務省の型式指定も取得済です。
【第CU-21002号】
寸法図
専用洗浄液(別売)
商品名 | ソニックスター専用洗浄液 |
---|---|
液性 | 弱アルカリ性 |
容量 | 18L |
品番 | 1931 |
価格 | 30,000 |
希釈 | 5%~ 10% |